経済指標とはなんぞや?
為替レートは、各国の経済状況に応じて変化します。
このため、外国為替取引をする人の多くは、各国の経済状況ならびに将来の動向を予測することで、為替レートの今後の方向性を推測します。
経済状況を把握する方法はいくつかあります。
例えば、デパートやスーパーに買い物に行くことで、販売されているモノやサービスの価格、つまり物価を知ることができます。
銀行に行けば、普通預金や定期預金の金利を知ることができます。
また、企業の経営者と話をすることで、日本のビジネスが活発になっているか、もしくは停滞しているか、つまりその国の景気を知ることができます。
ただ、自らの為替取引のためとは言え、多くの労力を使ってこうした調査をすることは現実的ではありません。
また、日本の場合ならともかく、アメリカやヨーロッパなど諸外国の経済状況を調べることは、労力・時間・コストが多大なものとなり、満足のいく調査をすることは現実的に不可能でしょう。
そこで、為替など金融取引をする人の多くは、各国の経済状況を把握するため、自ら調査をするのではなく「経済指標」を利用します。
経済指標とは、経済状況を構成する要因(物価・金利・景気・貿易など)を数値化したもので、経済状況ならびに過去からの変化を把握することを可能にします。
経済指標を使うメリットの一つは、感覚ではなく、数値という客観性を持って経済状況を把握できるということです。
数値データを使うことで「現状がどの程度の水準なのか?」「過去と比較して改善しているのか、あるいは悪化しているのか?」「どの程度変化しているのか?」などが理解できます。
経済指標の多くが、政府など公的機関で作成・公表されているため、調査が公平かつ公正に実施され、結果の正確性が高いのもメリットです。
もちろん、公的機関が実施しているとは言え、調査には測定誤差がつきものです。
しかし、経論済指標を利用することで、より正確に経済状況を把握することができます。
経済指標には、GDPなど景気全体を対象にしたもののほかに、物価・金利・貿易といった経介済状況を示す個別要因を対象にしたものもあります。
このため、経済指標の数は、経済状況を示す要因が多々あることもあって、一つの国だけでも数十個存在します。
特に経済規模の大きい米国や日本の経済指標の数はとても多く、米国の場合、主だったものだけで100近くになると言われています。
ただ、為替取引を目的に経済指標を利用する場合、全ての経済指標に目を通す必要はありません。
為替市場が注目する経済指標は、経済指標の数が多い米国の場合でも10個程度です。
特に経済指標に慣れていない人は、まずは次で紹介する経済指標だけに注目して、徐々にカバーする経済指標の数を増やしていけば問題ありません。
正確に把握するには公的機関や専門的なウェブサイトがお勧め
経済指標の内容を確認する際には、できるだけ正確な情報ツールを利用すべきでしょう。
新聞やテレビといったマスコミでは、経済指標が発表された翌日に、結果の要約を報道することがあります。
しかし、こうしたマスコミ報道は、あくまで経済統計の結果の要約であり、また、指標が発表されてから時間が経っているため、すでに為替取引にとっては織り込みずみで、有益な情報とは言えない場合がほとんどです。
やや面倒かもしれませんが、経済指標の内容を把握する際には、経済指標を公表している政府などの公的機関のウェブサイトか、経済指標を正確に取り扱っている専門的なウェブサイトを利用することをお勧めします。
注目度が高い「指標」について
米ドルに関わる指標
1:非農業部門雇用者数(NFP)
農業部門以外の労働者の増減を数値化したもの。
2:ISM製造業景気指数
米国供給管理協会(ISM)による企業の景況感を表す指標
ユーロに関わる指標
1:Ifo景気指数
ドイツの企業を対象に調査するもので、ドイツ経済を占う指標
2:ZEW景況感指数
上記と同様に、ドイツの景気を占う指標だが、アナリストや機関投資家を対象とする調査を行う
日本円に関わる指標
1:日銀短観
日本銀行が企業を対象に調査するもので、景気動向を占う指標
2:鉱工業生産
鉱業または製造業に属する企業の稼働状況などを表す指標
英国ポンドに関わる指標
1:HICP
英国のインフレターゲット(2%)の対象
正確に把握するには、公的機関や専門的なウェブサイトを利用することをお勧めします。
「経済指標」を見る際に欠かせない三つの数値とは?
まずはデータの種類をしっかり理解する
「経済指標」は、経済状況を示す数値データで構成されていますが、データには「原数値」「指数」「季節調整値」の三種類があります。
経済指標を利用する際には、示されているデータがどの種類であるかをきちんと理解しておく必要があります。
データの種類を理解しないまま経済指標を利用すると、指標が示す経済状況を誤解する恐れもありますので、ここできちんと理解しておきしましょう。
原数値
データに何も調整・加工を施していない数値を意味します。
通常、経済活動から得られたデータをそのまま統計値としたものを原数値としますので、まさに生きたデータ(生データ)と言えます。
例えばテレビの販売価格が15万円、リンゴの価格が150円だとすると、15万円、150円が原数値となります。
指数
同種の数値の大小を比べる際に用いられるもので、ある基準に対する比率を示したものです。
データの大きさや単位に重要性がなく、データの変化に注意を払いたい時に用いられます。
例えば、先ほどと同様にテレビとリンゴの例で考えてみましょう。
テレビの価格は、昨年10万円でしたが、今年は15万円になったとします。
一方、リンゴは、昨年は100円でしたが、今年は150円になったとします。
昨年から今年にかけての変化幅は、テレビが5万円(=15万円―10万円)、リンゴは50円(=150円―100円)となります。
変化幅そのものを見ると、テレビはリンゴの1000倍(5万円は50円の1000倍)もの変化をしたことになります。
しかし、これは単にテレビの価格がリンゴの価格の1000倍だからです。
昨年から今年にかけての変化率を考えると、テレビ、リンゴはともに20%増であり、両者とも同じ割合で変化したことがわかります。
このように、価格の水準ではなく変化に注目したい場合、原数値データを使ってしまうと、もともとのデータの規模の違い(5万円と150円)などによって誤った解釈をする可能性があります。
また、販売価格の単位は、日本で販売されていれば当然円になりますから、あえて原数値を利用する必要もありません。
そこで、価格などの場合は原数値ではなく指数を利用します。
先の例で見ると、昨年の価格を基準(100)とすると、今年の価格はテレビもリンゴも150となります。
指数を使うことで、昨年から今年の価格の変化は、テレビもリンゴも同じであることがわかります。
季節調整値
季節調整値は、数値から季節変動を取り除き、データを経済の実勢に近づけた形で利用するものです。
季節変動とは、「天候(暑い、寒いなど)」「取引慣習(お中元、お歳暮など)」「社会慣習(お正月、クリスマスなど)」によって、毎年ほぼ同じように観察される規則的な動きのことを意味します。
例えば、チョコレートの売上高を考えてみましょう。
ご存知のとおり、チョコレートの売上高はバレンタインデーがある2月に最も高くなります。
このため、チョコレートの売上高を原数値や指数で見ると、1~2月にかけては増加幅や増加率は非常に大きくなり、2~3月にかけては減少幅や減少率が非常に大きくなります。
この場合はいくつかの統計的手法を駆使することで、季節変動を取り除いた季節調整値でチョコレートの売上高を見るのが適切です。
通常、経済統計の多くには、原数値とともに季節調整値も公表されるので、自分で統計的手法を使って季節調整値を作成する必要はありません。
なお、経済指標の中には、季節調整値が公表されない場合もありますが、この場合は季節変動があまり大きくないので、原数値もしくは指数を利用することで問題ないと考えてよいでしょう。
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